2025/07/13 07:03

包丁の研ぎ方|基本の6ステップ
道具は中砥石(#1000)が1本あればOK。家庭の三徳・牛刀なら、これで切れ味はしっかり戻ります。
この記事の流れ
1. 研ぎの準備(砥石を水に浸す・面直し) / 2. 構え方と角度 / 3. 表側を研ぐ / 4. 裏側を研ぐ / 5. カエリの取り方 / 6. 力加減・動かし方のコツ / 7. 状態別の砥石選び / 8. よくある失敗と対策 / 9. 仕上げとメンテナンス / FAQ / プロの研ぎを動画で見る
※砥石の選び方・必要な道具を含めた全体像は「はじめての砥石を選ぶ方へ、ずばりおすすめの砥石は?」にまとめています。
1. 包丁研ぎの準備|砥石の管理・水への浸し方
砥石の種類を確認し、水に浸す
砥石には「吸水タイプ」と「不吸水タイプ」があります。吸水タイプの場合は、研ぎ前に必ず5〜10分ほど水に浸し、気泡が出なくなるまで十分に水を吸わせます。これを怠ると、摩擦が強すぎて刃や砥石を傷めたり、研ぎムラの原因となります。
砥石の平面を常に整える
砥石は、包丁を研ぐときに研磨剤を少しずつ放出するため、砥石自身も削れて凹んでしまいます。これは自然な現象ですが、放置すると研ぎムラの原因になるため、平面修正用砥石(シャプトン面直し砥石など)やダイヤモンド砥石で定期的に平面を整えることが重要です。
※製法別の吸水時間や、必要な道具のより詳しい解説は
「砥石デビュー前に揃えたい道具と、製法でこんなに違う「水の浸し方」」をご覧ください。
2. 包丁の構え方・姿勢のコツ
包丁の角度は15度をキープ
砥石に当てる刃の角度は約15度が目安です。イメージしにくいときは、刃の背(峰)の下に10円玉を2枚重ねて差し込んだくらいの隙間が、ちょうど約15度の目安になります。
角度が合っているか不安なときは「マーカー法」が確実です。刃先を油性ペンで黒く塗り、軽く2〜3回研いでから、インクの消え方を見ます。
・刃先のキワまでインクが消えている → 角度はOK。そのまま研ぎ進めます。
・刃の根元側(肩)だけ消えて、刃先にインクが残る → 角度が寝すぎです。ほんの少しスパインを上げて(立てて)研ぎます。
角度が安定しないと刃先が丸くなり、いくら研いでも切れません。最初は「ちょうど15度」を狙うより、同じ角度を保ち続けることを優先してください。これだけで仕上がりが見違えます。
どうしても角度が安定しない方は、砥石を一定角度で固定して研げるスエヒロ「ハンディストーン SKG-48」のような道具を使う手もあります。
両手で包丁を安定させる
利き手で柄を持ち、反対の手で刃先を軽く押さえ、体の正面で安定して前後に動かすことが大切です。脇を締めて研ぐとブレがなくなります。
3. 表側(右利き用の刃側)を研ぐ
軽く前に押し出しながら、刃元から刃先まで砥石の端から端まで均等に滑らせます。
刃元・中央・切っ先の3つの部分に分けて15〜20往復ずつ丁寧に研ぎます。
包丁の先端に向かうほど刃がカーブしているため、一定の角度を保つために包丁を少し起こすよう調整します。
裏側にバリ(金属のめくれ)が出てくるまで続けます。

4. 裏側を研ぐ
表側にバリが出たら、裏側を研ぎます。
表側より軽めの力で、同様に先端から根元まで均一に動かします。
刃元を研ぐ際は、柄が砥石に当たらないよう砥石に対して包丁を直角に構えると良いでしょう。
裏側にもバリが出るまで丁寧に研ぎます。

5. カエリ(バリ)の取り方
そもそもカエリ(バリ)とは、研いだ反対側の刃先にできる髪の毛のように細い金属のめくれのこと。これは刃先が砥石にきちんと届いて削れている証拠です。指の腹を、刃先から峰(背)へ向けてそっとすべらせると引っかかりとして確認できます(刃に沿って撫でるのは危険なので避けてください)。カエリが刃の端から端まで全長に出たら、その面は研げたサイン。出ない場所は角度が寝すぎて刃先に当たっていません。
仕上げにバリを取り除きます。バリを放置すると切れ味が落ちたり引っかかりを感じます。
砥石の表面で軽く交互に数回こする
または新聞紙に数回スッと引く
力を入れず優しく仕上げると、切れ味がワンランクアップします。
▶ カエリがうまく取れない・研いだ直後だけ切れる方は「包丁のカエリ(バリ)の取り方」へ
6. ヒント!コツ。力加減・包丁の動かし方
・力を入れすぎない
包丁の重さを利用して研ぎます。特に引く時にやや力を入れるのが効果的です。
・指で圧力を調整する
刃元・中央・刃先の位置に指を置き換えて圧力を調整し、均一な研ぎを目指します。
・研ぎ汁(とぎじる)は流さない
研いでいると出る黒っぽい泥が「研ぎ汁」です。これ自体が研磨剤として働き、刃をなめらかに整えてくれるので、洗い流さずに研ぎ続けてください。乾いてきたら少量の水を足す程度に。流しすぎると研磨効率が落ちます。
7. 包丁の状態別・砥石の選び方
大きな欠け・傷がある場合:荒砥石(#120~#400)
日常的なメンテナンス:中砥石(#1000)
プロ並みの仕上げ:仕上げ砥石(#3000~#8000)
初めて砥石を購入する場合は、まず#1000の中砥石を選ぶのがおすすめです。中砥石は、日常のメンテナンスに幅広く対応でき、最初に手にすべき1本です。
仕上げの番手は鋼材で変えると効率的です。ステンレス系の包丁は#3000程度までで十分な切れ味が出ます。鋼(はがね)系は#6000〜#8000まで上げると、より繊細で長切れする刃になります。とはいえ家庭用なら、まずは#1000の中砥石1本で実用十分です。
※番手(#の数字)の意味や選び方は「砥石の番手とは?」でくわしく解説しています。
※ステンレス包丁を研ぐコツ(粘るカエリの取り方・ダイヤ砥石は必要か)は「ステンレス包丁の研ぎ方|砥石で切れ味を戻すコツ(#1000一本でOK)」でくわしく解説しています。
初めての砥石選びについて、より詳しい解説は「はじめての砥石を選ぶ方へ、ずばりおすすめの砥石は? 選び方・使い方・Q&A」をご覧ください。
8. 包丁研ぎでよくある失敗と対策
研いでも切れない/すぐ切れ味が落ちる
原因:カエリ(刃先のめくれ)が出るかで2パターン。
①カエリが出ない=刃を寝かせすぎて砥石が刃の「肩」に当たり、刃先まで届いていない。②カエリは出るが取り切れていない=指では取れたように見えても微小なカエリが残り、トゲのように食材へ食いついて直後は一時的に切れ味を感じるが、脆くすぐ崩れて切れ味が落ちる。
対策:①はマーカー法で確認し、刃先のキワまでインクが消えるよう少しスパインを上げる(立てる)。②は仕上げに軽く左右交互→革砥(または新聞紙)で微小カエリまで取り切る。
刃先が丸くなる・すぐ切れなくなる
原因:研ぐたびに角度がバラつく(しゃくり研ぎ)
対策:手首を固定して同じ角度をキープ。短く刻まず長めのストロークで研ぐ
研ぎ傷が深く残る・仕上がらない
原因:番手を飛ばした(荒砥からいきなり仕上げ砥へ)
対策:#1000で形を作ってから番手を上げる。順番を飛ばさない
砥石が滑る・削れている感じがしない
原因:砥石の吸水不足/面が凹んでいる/目詰まり
対策:十分に吸水し、面直しで平らに戻す(下の解説記事も参照)
鎬(しのぎ)が崩れた ※和包丁
原因:角度を寝かせすぎて鎬まで削ってしまった
対策:片刃は研ぎ方が異なる。下記「和包丁(片刃)の研ぎ方」を参照
【迷ったときのアドバイス】
※初めて研ぐ時は、角度が合っているのかも分からず、これでよいものか(?)と迷いながら研ぐことでしょう。
何度か繰り返すうちに、余計な力が自然と抜けて一定のリズムで研ぐことができるようになります。
「ちょうど15度」が分かる人などいません。あくまでも大体の目安です。
不思議と、無駄な力が抜けた頃には自分なりの「一定の角度」が身についているものです。
気楽に構えて包丁を研いでみましょう。
※砥石が凹むのは、研磨剤を放出するために砥石自体が削れる自然な現象です。定期的に平面修正を行うことで良好な状態を保てます。
※「研いでも切れない」「砥石が滑って研げない」——
こうした症状の原因は、刃物側・砥石側・接触のしかた、それぞれにあります。
自分の研ぎがどこで詰まっているかを見分けたい方は、こちらの解説記事もどうぞ。
▶ 「包丁が研ぎにくい」の正体|鋼材と砥石の『硬い』の違いを解説
この記事は両刃包丁(三徳・牛刀など)向けです。出刃・柳刃などの片刃包丁は、裏押しや切刃など研ぎ方が異なります。
▶詳しくは「和包丁(片刃)の研ぎ方|表・裏押し・切刃の3ステップ」をご覧ください。
9. 仕上げとメンテナンス
水洗い後、乾燥させる
砥石・包丁・作業スペースを洗い、風通しのよい室内(日陰)で乾燥させて保管しましょう。
※砥石は、基本的には温度/湿度変化を避けていただいた方がよいです。
環境変化に強いのは、吸水性の純粋なビトリファイド製法による砥石のみとお考え下さい。
切れ味テスト
紙やトマトを切り、切れ味を確認します。
研ぎの後のワクワクするひとときです。無駄に食材を切って奥様に怒られないようにしてくださいね。 (^^♪
FAQ
Q. 家庭で包丁を研ぐ方法は?
中砥石(#1000)を1本用意すれば、家庭で十分に研げます。砥石を水に浸し、刃を約15度(10円玉2枚分)で当てて「表→裏→カエリ取り」の順に研ぐだけ。本記事の手順どおりで、三徳・牛刀なら切れ味がしっかり戻ります。引いて使う簡易シャープナーは応急処置にはなりますが、刃を削りすぎて長持ちしません。きちんと切れ味を戻すなら砥石が本命です。
Q. 研いではいけない包丁は?
次のものは通常の砥石では研げない・研がないのが基本です。
・セラミック包丁……非常に硬く、研ぐなら専用のダイヤモンド砥石が必要です。
・波刃(パン切り包丁・一部のステーキナイフ)……ギザギザの刃は砥石で研ぐ形状ではありません。
・コーティング刃・装飾用の刃……表面加工を傷めるため、刃そのものの手入れは慎重に。
一方で、家庭にある一般的な金属製の包丁(ステンレス・鋼の三徳・牛刀・ペティなど)は、砥石で問題なく研げます。極端に硬い特殊鋼(HRC63以上の粉末ハイス等)は、研ぎにくいためダイヤモンド砥石や硬めの砥石が向きます。
Q. 包丁は研げばずっと使えますか?
研ぐたびに刃はごくわずかずつ減りますが、家庭用なら正しく手入れすれば何年も使えます。長持ちのコツは、毎回できるだけ同じ角度で研ぐことと、砥石の平面を保つ(面直しをする)こと。逆に角度がバラついたり削りすぎると、刃が早く痩せてしまいます。刃幅が極端に細くなる・刃こぼれが直せないほど大きい、という段階になって初めて買い替えどきです。
Q. どのくらいの頻度で研ぐ?
使用頻度によりますが、週1回〜月1回が目安です。「トマトの皮が滑る」「紙がスッと切れない」と感じたら研ぎどきのサインです。
Q. 初心者が一番注意する点は?
角度の維持と力加減です。「ちょうど15度」を狙うより、同じ角度を保ち続けることが大切。最初は丁寧にゆっくり、包丁の重さを利用して研ぎましょう。
この記事を参考に、包丁研ぎを楽しみながら料理をより快適にしましょう!
プロの研ぎを動画で見る
「文章では分かったけど、実際の手の動きを見たい」という方のために、 プロの実演を2本ご紹介します。どちらもALTSTONEの砥石を使った貴重なデモンストレーションです。料理人おいりさんによる入門動画(約2分半)
「全ての砥石ユーザーの入り口になるようなショート動画を」というオーダーで、 包丁料理人おいり様に作っていただいた動画です。 実質2分半の中に、研ぎのポイントがぎゅっと詰まっています。
板前シンヤさんによる実演動画(約1分)
ご自身のYouTubeチャンネルでALTSTONE 深#1000をご紹介くださいました。
研ぎの手の動き・音・刃先のチェック方法など、
プロの細やかな技を1分でコンパクトに見ることができます。
シンヤさんのチャンネル「板前シンヤの絶品☆おうちごはん」では、
包丁の手入れに加え、家庭料理のヒントもたくさん紹介されています。
※紹介してくださった背景や、動画ではカバーしきれなかった ALTSTONE 深#1000の解説については、別記事 「プロの板前が教える包丁研ぎ|ALTSTONE 深#1000の実演動画をご紹介」もご覧ください。
はじめての1本に
研ぎは、手を動かして初めて身につく作業です。 この記事の内容を実際に試すための、最初の1本としてご検討ください。 ALTSTONEの「深#1000」は、家庭の包丁ほぼすべてに対応する中砥石です。✅ オールマイティな#1000の番手
✅ 適度な硬度で鋼材を選ばず、ステンレスから鋼まで対応
✅ 家庭用キッチンに合うコンパクトサイズ
はじめての1本には、当店の深#1000(中砥石)がおすすめです。





