2026/06/03 06:56

【結論】研ぎにくさを決めるのは硬さ(HRC)ではなく、鋼材に含まれる炭化物の「量×硬さ」です。VG10までの家庭包丁は通常のアルミナ系の中砥で研げます。S90V・S110Vなどバナジウム量の多いアウトドアナイフ級の鋼材だけ、仕上げにダイヤモンド/CBNが必要になります。
自分の包丁がどのグループかは、下の「鋼材グループ×砥石の逆引き表」で一発確認できます。まず家庭用の万能砥石としては「ALTSTONE 深 #1000」が最初の1本におすすめです。
迷ったらまず「ALTSTONE 深 #1000」からどうぞ。
この記事の内容
- ・鋼材から逆引きする砥石選び|決め手は「硬さ」ではなく「耐摩耗性」
- ・まず、あなたの包丁はどのグループ?
- ・研磨剤より硬いVCが、それでも研げる理由
- ・関連記事|砥石そのものの基礎
- ・ALTSTONEのラインナップ|製法と用途で選ぶ
- ・SUMMARY
📖 砥石そのものの分類(番手・製法・砥粒)は、前編「砥石の種類|番手・製法・砥粒から見る分類ガイド」をどうぞ。
「自分の包丁にはどんな砥石が合うのか」——この問いに、HRC(硬度)だけで答えるのは不正確です。研ぎとは砥石で刃物を意図的に摩耗させる行為であり、鋼材側の「研ぎにくさ」は本質的に 耐摩耗性 と同じもの。そして耐摩耗性は、HRC ではなく 鋼に含まれる炭化物の量と硬さ で大きく決まります。
この後編は、「鋼材に合わせて砥石を選ぶ」ことに絞った実践ガイドです。研ぎにくさを決める炭化物の「量 × 硬さ」を一枚のマップにし、主要鋼材を辞典で引けるようにまとめます。(砥石そのものの種類・製法・面直し・名倉などの基礎は、記事末の関連記事にまとめています。)
なお本記事は、日本製砥石をつくる専門店という立場から、鋼材と砥石の相性を「どの砥石で研げるか」という実用の観点で整理しています。冶金の数値は下記の一次情報に基づきます。
01
鋼材から逆引きする砥石選び|決め手は「硬さ」ではなく「耐摩耗性」
「自分の包丁にはどんな砥石が合うのか」——この問いの答えは、刃物の 耐摩耗性 で大きく変わります。
研ぎとは、砥石で刃物を意図的に摩耗させる行為。だから鋼材側の「研ぎにくさ」は、本質的にその鋼材の「耐摩耗性」と同じものです。HRC(硬度)はその一要素ですが、より支配的なのは 鋼に含まれる炭化物の量と硬さ。特にバナジウム炭化物は、通常の砥石で使われるアルミナ砥粒より硬く、砥粒では削れません。これが多い鋼材ほど削りにくくなります(クロム炭化物はアルミナより軟らかいので砥石で削れます)。
※ここで言う「研ぎにくさ」は"削れにくさ"——砥石で金属がなかなか減らないこと——を指します。これとは別に、柔らかい鋼材では刃先がめくれて粘るカエリ(ワイヤーエッジ)になり、クリーンな刃が付かない"刃の付きにくさ"という、もう一つの研ぎにくさがあります。安い柔らかいステンレスで「研いでも切れない」と感じやすいのはこのためで、これは耐摩耗性ではなく延性(粘り)の話です。詳しくは「包丁が研ぎにくいの正体|鋼材と砥石の『硬い』の違いを解説」をご覧ください。実際の研ぎ方・粘るカエリの取り方は「ステンレス包丁の研ぎ方(#1000一本でOK)」へ。
まず、あなたの包丁はどのグループ?
鋼材の型番が分からなくても大丈夫です。どこで買ったか・いくらくらいかで、だいたいの当たりがつきます。まず自分の現在地を確認してから、先を読んでください。
- ・① ふつうの家庭用包丁(スーパー・量販店・ホームセンターで買った、数百〜数千円)
→ ほとんどがステンレス系。手持ちのどんな砥石でも素直に研げます。大半の方はここ。 - ・② ちょっと良い包丁・専門店の包丁(刃物店や百貨店で買った、数千〜数万円)
→ VG10・銀三・ZDP-189・粉末ハイスなど。通常の砥石で研げますが、「滑る・食い付きが悪い」と感じることがあります(後述)。 - ・③ アウトドアナイフ・趣味の世界(折りたたみナイフ、海外の"スーパースチール"など)
→ S90V・S110V など。ここはもう包丁ではなくナイフの領域で、ダイヤモンドが必要になります。
いちばん大事な境界線
家庭の包丁の話は ② まで。普通の砥石で研げます。 ③ はアウトドアナイフ・マニアの世界で、ダイヤモンドが要る別ジャンルです。「自分は①か②」という方は、この先のダイヤが必要という話は読み飛ばして構いません。
この記事ではこの後、「なぜ硬い包丁でも普通の砥石で研げるのか」「なぜ②では滑ると感じるのか」を順に説明します。仕組みに興味がなければ、表だけ見て自分のグループの『適した砥石』を確認すればOKです。
「硬い=研ぎにくい」ではない(ZDP-189の例)
高硬度の代表として包丁にも使われるZDP-189は、HRC65〜67と非常に硬い鋼ですが、普通の砥石で研げます。理由は、硬さの正体がクロム炭化物(アルミナ砥粒より柔らかい)で、しかも粉末冶金で微細だから。
ここがこの記事の肝です。研ぎにくさを決めるのはHRC(硬さ)ではなく、炭化物の『量』と『硬さ(種類)』の掛け算。ZDP-189は炭化物の"量"は多いのに、"硬さ"がクロム系で研磨剤より軟らかいため砥石で研げます。まず全体像を下のマップで示し、仕組みは後半で説明します。
鋼材マップで一望する

※マップの横位置は炭化物の体積率(組成からの推定)に基づく相対配置で、厳密な実測スケールではありません。縦は「含まれる中で最も硬い炭化物」で代表。青紙スーパーは高炭素鋼ですが、含むタングステン系炭化物の硬さを示すため境界帯に置いています。HRC・体積率は熱処理やロットで前後します。
鋼材辞典|主要鋼材を「量 × 硬さ」グループ別に
上のマップを、鋼材名で引けるようにした一覧です。HRCは目安(熱処理で変動)。並びはマップの縦軸(炭化物の硬さ)と同じ A→D の順。
(この後に出てくる「逆引き表」は"砥石を選ぶ"ための早見。こちらは"鋼材を名前で引く"リファレンスです。研げるか/ダイヤが要るかはマップと逆引き表でご確認を。)
A. 鉄系(セメンタイト)── 炭素鋼。最も細い刃がつき、研ぎやすさ随一
- ・白紙(1号・2号) HRC60〜64。無合金の高炭素で、炭化物が少なく最高に細い刃に。切れ味の頂点だが錆びやすい。
- ・青紙(2号) HRC61〜64。白紙に Cr・W を少量加え、刃持ちを底上げ。まだ十分に研ぎやすい。
- ・黄紙・SK材(SK4/SK5) HRC58〜62。安価な炭素鋼。素直に減る。錆びやすい。
B. クロム系炭化物 ── 家庭包丁の主流。量が多いほど手数はかかる
- ・銀三(銀紙3号) HRC58〜61。錆びにくいのに炭素鋼に近い研ぎ味。和包丁の入門ステンレス。
- ・モリブデン系(モリブデンバナジウム鋼=MV鋼)・X50CrMoV15(4116) HRC55〜58。量産・家庭用ステンレスの定番。炭化物が少なく軟らかめでよく減る、このグループ随一の研ぎやすさ。
「バナジウム鋼」なのにバナジウム系(D)じゃないの? ── MV鋼の分類
結論:MV鋼は名前と違ってBグループ(クロム系)です。どんな砥石でも素直に研げます。
理由はシンプルで、鋼材名は「配合した元素」、この記事の分類は「実際にできる炭化物」だから。MV鋼のV添加量は0.2%以下と微量で、硬いVC(バナジウム炭化物)はほぼ形成されず、Vは結晶粒を細かくする働きに回るだけです。Moも大半がクロム炭化物や母材に溶け込みます。つまり実際に砥石に当たる炭化物はクロム系のみ。VCを実際に形成するVG10やHAP40(V 1%以上が目安)とはまったくの別物です。
- ・8Cr13MoV/9Cr18MoV HRC57〜60。安価な汎用ステンレス。クセが少ない。
- ・AUS-8/AUS-10 HRC57〜60。汎用ステンレス。素直で扱いやすい。
- ・14C28N(サンドビック/AEB-L系) HRC58〜62。微細組織で細い刃が付く。研ぎやすく錆びにくい。
- ・VG10/VG1 HRC60〜61。高級家庭包丁の定番。刃持ちが良い反面「滑る・粘る」と感じやすく、"研ぎの最初の壁"と呼ばれる。「コバルト合金鋼」「コバルトスペシャル」表記(藤次郎など)は多くがVG10系。
- ・ATS-34/154CM/CPM-154 HRC59〜61。14Cr・4Mo。洋ナイフや一部包丁の定番(V を含まない)。
- ・440A/440C HRC56〜60。440C は炭化物が大きめで刃持ちが良く、刃はやや粗くなりがち。
- ・D2/SKD11 HRC60〜62。大きいクロム炭化物で耐摩耗が高く、手数はかかる。半ステンレス。
- ・ZDP-189 HRC64〜67。クロム炭化物が大量で刃持ちは最強級。硬く手強いが、炭化物自体は研磨剤より軟らかい。
- ・SG2/R2(SGPS・粉末ステンレス) HRC62〜64。Vを約2%含むが、Crが炭素を奪うためVC量は少なく(≈0.5%)、クロム炭化物が主体。粉末で微細・刃持ち良く、砥石で研げる(高級和包丁に多い)。
C. タングステン系(WC・境界)── 硬い炭化物だが量が少ない
- ・青紙スーパー(青紙1号も近い) HRC64〜66。高炭素に W・V・Cr を添加。主役は鉄炭化物で、硬めの炭化物は少量。硬く手数はかかるが、切れ味・刃持ちは最高峰。
D. バナジウム系(V・Nb・Ti)── 仕上げはダイヤ/CBNが楽
- ・S30V/S35VN HRC58〜61。VC を含む高級洋ナイフの定番。
- ・M390/20CV/204P HRC60〜62。高クロム+V のプレミアム洋ステンレス。
- ・HAP40(粉末ハイス) HRC64〜67。VC+W/Mo 系。刃持ち極上で高級和包丁に。
- ・MagnaCut HRC60〜64。V・Nb 系だが炭化物が細かく、D の中では比較的研ぎやすい現代鋼。
- ・S90V/S110V/10V HRC58〜62。VC が大量で粗大。アウトドア・趣味の領域。
- ・(参考)M4・K390 粉末ハイス系。アウトドアナイフ向け。
※ 1つの鋼材は複数種の炭化物を含みます(例:S30V はクロム+バナジウム炭化物)。ダイヤが要るかは「含まれる中で最も硬い炭化物」で決まり、少量でも VC があればそこが効きます。だからグループ分けは"最も硬い炭化物"を基準にしています。
では、その「量×硬さ」とは具体的に何の話なのか。鍵は、鋼の中に散らばる炭化物(カーバイド)です。炭化物は、鉄の母材(マトリックス)の中にレーズンのように埋まった硬い粒。研ぎにくさは、基本的にこの炭化物の「量 × 硬さ」で決まります(さらに細かくは粒の大きさも効きます)。
炭化物にも硬さの差がある
- ・鉄炭化物(白紙・青紙・SKなど)── Knoop≈1000。アルミナ砥粒(≈2100)で楽に削れる
- ・クロム炭化物(VG10・銀三・ZDP-189など)── Knoop≈1300〜1800。アルミナ砥粒より軟らかく、砥石で削れる(量が多いと手数はかかる)
- ・タングステン炭化物(青紙スーパーなど)── Knoop≈1800〜2200。アルミナとほぼ同等の"境界"。量が少なければ砥石でOK。
- ・バナジウム炭化物(SG2・S30V・S90Vなど) ── Knoop≈2800。アルミナ砥粒より硬く、削れない → 仕上げにダイヤ
※硬さの数値は測定スケール(Knoop/Vickers)や出典で幅があります。重要なのは「鉄系<クロム系<タングステン系<バナジウム系」、「VCは一般研磨剤より硬い」という相対関係です。
ここで一つ用語を整理します。鋼材のスペック表にある「バナジウム(V)」は配合する金属元素そのもの。それが鋼の中で炭素と結びついてできる硬い粒が「VC(バナジウム炭化物)」です。料理でいえば、バナジウム=レシピの「にんにく◯片」、VC=実際に皿に入った「にんにくの塊」。表に載るのは前者の数字、砥石に当たって抵抗するのは後者の粒、という関係です。
つまり、バナジウム量(V%)が多い鋼ほど、硬いVCの粒が多く・大きくでき、砥石で削りにくくなります。
研磨剤より硬いVCが、それでも研げる理由 ── 母材ごとえぐり取る
硬いVC(バナジウム炭化物)を実際に多く抱えるのは、S30VやHAP40などの粉末鋼です。VCはアルミナ砥粒より硬く、砥粒では削れません。
では、その硬いVCを抱えた鋼は研げないのか──そうではありません。砥粒はVC粒を削る代わりに、VCを包んでいる母材(鉄)ごと、粒として丸ごとえぐり取るのです。
レーズンそのものを削れなくても、周りのパン生地ごとえぐればレーズンは外れて表面は平らになる。これが「えぐり取り」です。
荒砥(粗い大きな砥粒)が硬い鋼にも効くのはこのため。逆に高番手(細かい砥粒)になると砥粒がVCより小さくなり、えぐり取れず削りにくくなる。S30VやHAP40で「中砥までは進むのに、仕上げで急に進まない」と感じるのはこの段階で、ここからダイヤが楽になります。
※ さらに上の世界:超硬の鋼材を持っている方へ
ここから先は、アウトドアナイフや一部のマニア向け包丁で使われる「超硬鋼材」の話です。家庭の三徳・牛刀しか使わない方は読み飛ばして構いません。
これらの鋼材が研ぎにくいのは、硬いVC(バナジウム炭化物)が"量も多く粗大"だから──つまり『量 × 硬さ』の両方が高いからで、製法そのものではありません。
- ・HAP40・M4(V約3%)── 粉末冶金で炭化物が微細。えぐり取りが効き、通常の砥石でも研げます(食い付きは悪め)
- ・S90V・S110V・10V(V約9〜14%)── VCが多く粗大。えぐり取りも砥粒対決も負け、ダイヤ・CBNが実質必須
冶金データでも、アルミナ砥石はバナジウム約3%超から刃先が急に崩れやすくなる傾向が報告されています。粉末冶金は「同じV量でも炭化物を微細にして研ぎやすくする」製法で、研ぎにくさを和らげる側に働きます。
「砥粒が負ける」話と「砥面と喧嘩する」話は別もの
VG10やHAP40で「滑る・粘る・食い付かない」と感じることがあります。これは砥粒がVCに硬度で負ける話とは別の問題です。緻密な組織で砥泥が出にくく、砥面に刃が引っかかりにくいために起きます。
この食い付きの悪さに効くのが名倉です。名倉で砥面を軽く擦ると、剥がれた研磨剤の粒(遊離砥粒)が砥面を転がり、刃に引っかかる状態を作る。
泥状になるまで出さなくても、表面をひと擦りするだけで食い付きは上がります。「砥粒の硬さで削る」のとは別に、「転がる砥粒で研削を助ける」働きがあるわけです。
※セラミック包丁は「鋼材」ではない ── 別枠で考える
セラミック包丁(ジルコニア)は金属ではないので、ここまでの炭化物の議論とは別枠です。しかも、ジルコニアの硬さ自体はKnoop約1300で、アルミナ砥粒より柔らかい。
それでも普通の砥石で研がないのは、硬さで負けるからではなく、全体が均質に硬くて母材の逃げがなく、靭性が低く欠けやすいため。専用のダイヤモンドシャープナーが推奨されるのは、削るためというより欠けを防ぐためです。
耐摩耗性は経験則ではなく、定量データ: 鋼材メーカーは標準試験(ナイフ用途では CATRA edge retention 試験など)で耐摩耗性を測定し、データシートやレーダーチャートとして公開しています。下記の分類は、それらの公開データの傾向とおおむね一致します。

鋼材グループ × 砥石の逆引き表
| グループ/分類 | 代表鋼材(V量目安) | 適した砥石 |
|---|---|---|
| ① 炭素鋼系(ハガネ) | 白紙・青紙・SK・黄紙(V≒0) | アルミナ系(A・WA)の中砥で素直に研げる |
| ① 一般ステンレス | モリブデン系・4116・AUS-8・AUS-10(V≒0〜微量) | 標準的なアルミナ系中砥で問題なく研げる |
| ② 高合金ステンレス | VG10・銀三・SG2/R2(VG10はV≒0.2%/SG2はV≒2%だがVCは少なくクロム系主体) | 中砥で研げる。食い付きが悪ければ名倉で補助 |
| ② 高硬度・低バナジウム(高炭素高クロム) | ZDP-189(V≒0.1%・HRC65〜67) | 硬いが炭化物はクロム系で微細。通常の砥石で研げる(食い付きは悪め・名倉が有効) |
| ② 中バナジウム鋼(粉末・V約3〜4%) | HAP40・M4・S30V・M390/20CV など | 中砥までは通常砥石で可。仕上げの追い込みはダイヤ/CBNが楽。名倉が有効 |
| ③ 高バナジウム鋼(ナイフ領域) | S90V・S110V・10V など(V≒9%以上) | VCが多く粗大。中砥クラスからダイヤ/CBNが必要。鏡面まで追い込むならダイヤ/CBNのペーストやストロップが現実的 |
| ― セラミック包丁(非金属・別枠) | ジルコニア | ダイヤモンドシャープナーのみ(欠け防止のため軽く) |
※①②は家庭の包丁、③はアウトドアナイフ・趣味の領域。V量・HRCは目安で、熱処理やロットで前後します。ZDP-189やHAP40のように"硬いが研げる"鋼材もあり、硬さ(HRC)と研ぎにくさは別物です。
NOTE|VG10 が「最初の壁」と呼ばれる理由
家庭で多く使われる包丁の中で、研ぎの最初の難所として最もよく名指しされるのが VG10 です。クロム 15% にコバルト・バナジウムを加えた高合金ステンレスで、HRC 60 前後の硬度に加え、炭化物による高い耐摩耗性が「滑る」「粘る」研ぎ感を生みます。M390・S30V・粉末ハイス(HAP40 等)はさらに研ぎにくいのですが、家庭用包丁では出会う機会自体が少ないため、家庭ユーザーが現実的に「研ぎにくい」と感じる鋼材は、多くの場合 VG10 までで止まります。
鋼材の耐摩耗性と研ぎにくさの関係を、HRC・炭化物・砥石側の要因まで含めてさらに深掘りした記事として、「『包丁が研ぎにくい』の正体|鋼材と砥石の『硬い』の違いを解説」も合わせてどうぞ。
関連記事|砥石そのものの基礎
この記事は"鋼材に合わせた砥石選び"に集中します。砥石側の基礎は、それぞれの専用記事をどうぞ。
- ・砥石の種類・番手・製法・砥粒・結合度(硬口/軟口)の全体像 → 砥石の種類|番手・製法・砥粒から見る分類ガイド(前編)
- ・硬い砥石/軟らかい砥石の使い分けと鋼材との相性 → 砥石の「硬さ」と研ぎ味
- ・面直し(修正砥石の使い方・タイミング) → 砥石の面直しとは?
- ・名倉砥石の役割・使い方 → 名倉砥石は何のため?
- ・シンクで安定して研ぐ砥石台 → 砥石台のおすすめと選び方|タイプ別比較ガイド
- ・番手の意味と早見表(何番をそろえるか) → 砥石の番手とは?早見表と選び方
出典・根拠
本記事の炭化物の種類・硬さ(Knoop)・体積率は、冶金学博士 Larrin Thomas 氏の研究ブログ Knife Steel Nerds の公開データおよび解説に基づいています。硬さ(Knoop)の目安は バナジウム炭化物(VC)≈2800/炭化ケイ素(GC)≈2600/アルミナ(WA)≈2100。体積率は鋼材組成からの推定値で、マップ上は相対配置として用いています。
主な参照記事:
- ・Carbide Types in Knife Steels(炭化物の種類と硬さ)
- ・VG10 and Super Gold 2 (SG2/R2)(VG10・SG2の炭化物)
- ・How to Pick the Best Steel for Every Knife(耐摩耗性と炭化物量)
02
ALTSTONE のラインナップ|製法と用途で選ぶ
最後に、ALTSTONE のラインナップを、ここまでの分類軸に当てはめてご紹介します。製法ごとの設計思想をふまえ、用途に応じてお選びください。3シリーズの比較は「ALTSTONEの砥石はどれを買うべき?選び方ガイド」へ。
深(FUKAMI)|ビトリファイド・優しい研ぎ味のオールマイティ
ビトリファイド製法。結合度をやや低めに抑えた設計 で、どんな鋼材にも、刃の波形(断面の形状)にもオールマイティに対応します。家庭の包丁から、少しこだわった刃物まで、最初の1本として迷ったらこちら。#300・#1000・#3000・#5000・#8000 とフルラインで展開。
結合度を上げて緻密に設計。シャープな刃付け、緻密に研ぎ込みたい用途に最適です。研ぎに慣れた方、仕上げ品質を追い込みたい方向け。
ビトリファイドとは結合方式の異なる レジノイド製法 で展開している、ALTSTONE のもう一つの選択肢。樹脂結合ならではの研ぎ味の違いを楽しんでいただける、独自の存在感を持つシリーズです。
SUMMARY
- ・研ぎにくさは炭化物の「量 × 硬さ」で決まる(HRC=硬度では決まらない)
- ・硬さは鉄系<クロム系<<バナジウム系。VCはアルミナより硬く、仕上げにダイヤが要る
- ・家庭包丁の主流(VG10 まで)はアルミナ系(A・WA)中砥で対応可
- ・ZDP-189やHAP40のように「硬いが砥石で研げる」鋼材もある
- ・ダイヤ・CBNが要るのは高バナジウム鋼を細かく仕上げるときだけ
- ・砥石そのものの基礎(種類・製法・面直し・名倉)は専用記事にまとめている
— 日本のプライド、安心を、砥石で世界に届ける —
03
最初の1本に迷ったら
- ✅純日本製、ALTSTONE オリジナルのビトリファイド砥石
- ✅ステンレス・鋼・和包丁、刃物を選ばない万能設計
- ✅家庭の包丁メンテに最適な中砥 #1000
次に読むなら → ステンレス包丁の研ぎ方(#1000一本でOK)
もう一度商品を見る → ALTSTONE 深 #1000





